2012年10月22日月曜日

『中国修学旅行実施に際しての視点を考える』
1.中国への研修旅行の現状
 中国への修学旅行が今増加傾向にある。88年の高知学芸高校の上海列車事故や89年の天安門事件などにより一時停滞したものの、自治体の航空機利用許可、円高による国内旅行と費用面で遜色ないこと、教育面の国際化への対応などにより91年頃より復活傾向にある。94年に中国に修学旅行で訪れたのは94校・25,346名で、1位の韓国に次いで方面別でも2位にランクされている。旅行日数としては、韓国と同様に平均5日間(全体の64%)となっている。費用面では韓国の旅費平均の101,100円に次いで、146,200円と多方面に比較してより経済的な料金平均となっている。
2.中国への修学旅行実施するポイント
現在、中国へ修学旅行を実施する際のポイントしては、中国(台湾も含む)の場合、次ぎのような理由付けが多い。
 ・国際化への対応(国際理解教育)。
 ・国際理解、親善、交流。
 ・外国を学ぶことにより日本を良く知る。
 ・姉妹校訪問及び学校間交流
 しかし、これらのポイントが中国に方面を決める際の中国独自の理由とは考えがたい。最終的に広義的な意味で考えるなら、海外修学旅行を実施する際の代表的な目的理由と置き換えてもいい。つまりはっきり言ってしまえば中国に修学旅行を実施する理由というべき”顔”が見当たらないのだ。方面をどこに決めてもこれらの理由が立派な大義名分になるからだ。中国へ修学旅行を実施する中国独自の大きなテーマは必ずある筈だと思うのだが、実際のところたまたま経済的理由とか、実施の容易さで訪問国を中国にしたといういうものが意外と多いのではないかと考える。ここでは中国へ修学旅行を将来的に実施検討する学校に今一度そのポイントを企画立案したい。
 これから中国へ修学旅行を実施する際のポイントとして、次ぎの幾つかのテーマをあげてみた。

 テーマ■『歴史学習的視点から』
 テーマ■『ODAから中国をみる』
 テーマ■『国際文化使節交流団』
 テーマ■『中国の”現在と未来”を視察する修学旅行』
これら4つの視点から中国修学旅行を検討してみたい。_
テーマ■『歴史学習的視点から』
 1995年に太平洋戦争が終結して50年という節目の年を迎えた。残留日本人孤児問題をはじめ、中国人強制連行、南京大虐殺の真相など事実関係が今もあいまいなまま残っている。おりしもこの年、戦争により日本軍に破壊された南京城壁の修復などへ日本からボランティアが訪れたと聞く。加害者としての歴史学習は日本ではまだまだであるが、世界唯一の原爆被爆国としての視点を変えた両面からのバランスの取れた歴史学習を実施するために見学地として加えてみてはどうか。
《見学先候補》
 ・北京での見学先…中国人民革命軍事博物館、中国人民抗日戦争紀念館
 ・南京での見学先…南京大屠殺遇難同胞紀念館
テーマ■『ODA(政府開発援助)から中国をみる』
《ODA型修学旅行実施のメリット》
 ・政府の開発援助にテーマを絞ることにより、より専門的、より高度な研修旅行の実施が期待できる
・日本の国際貢献の現場や第一線で活躍する方々を通して、生きた国際化教育、理解の推進がはかれる。
・国際関係を理解することで、国際感覚を持った国際人を育成する。
《現地活動プログラムの例》
 ・ODAの援助現場への視察訪問。
 ・地域のボランティア活動の見学および体験参加。
 ・在留日本政府関係機関への訪問および国際交流セミナー、意見交換会の実施。
 ・現地の中学生、高校生との交歓会。
 ・現地中学校、高校の授業を合同で体験。
 ・現地国際交流組織団体との交流会。など、外務省の外郭団体の協力をえて実施する。

《中国での視察先例》
 ・日中友好病院(北京市)・永福小学校復興計画(上海市) ・北京第二福祉院(北京市)・上海地区清掃車(上海市)
・地下鉄(北京市)   
・上海江橋老人ホーム(上海市)  他
テーマ■『国際文化使節交流団』
 中国と友好(姉妹)都市を結んでいる日本の自治体は92年上期の時点ですでに132都市にまで達している。中国との友好都市提携については、他国に比べて政治的影響を非常に受けやすいという特徴をもっている。今後中国の都市との友好都市提携が促進されるかどうかは、日本と中国の関係により左右されることが大きいと予想される。しかし文化や経済面での協力などが、今後は民間レベルので交流の中心となるであろ。中国本土においても解放都市が年々増加しているという現状から息の長い国際交流が期待されている。このような中で、学校が所在する自治体に中国の都市と友好都市提携を結んでいる都市があるであろう。これらの自治体の関わりからその都市を訪問した修学旅行をつくることを提案したい。


例/日中共同でお茶、書道、お花、伝統芸能などの文化を中心とした地域の文化イベントに参加できないか。日本からの中国友好都市への一文化使節団の代表としての位置付けからその都市のイベントに参画する。単なる学校間の交流に止まらない文化を通じた相互理解を考えたい。
テーマ■『中国の”現在と未来”を視察する修学旅行』
・21世紀の世界の成長市場「経済特別区」を視察する。日本経済が低迷する中、中国は2010年には世界最大の経済大国になると発表がされて久しい。「改革と開放」の政策のもと深、珠海、汕頭(広東省)、厦門(福建省)など経済特別区が指定され世界が注目している。やがては日本に脅威となるべく経済の発展が予想される国の今を、修学旅行で若いみなさんに自分自身で見て体験してもらうことを提案したい。内容的に一般企業へのテクニカルビジット的な高度なものとなるが是非とも高校生の今だからこそ実施したい素材テ-マである。
・今中国の大都市(北京・上海)で流行しつつあり、最も注目されているテーマについてその都市を見学してみたい。また今後ますます伸びるであろう分野について現状を探ってみるのはどうだろう。
例/「自動車産業」「ペット産業」「インテリア」「外食産業」「ファーストフード」理容美容」「百貨店」をテーマに都市を視察する。

例/環境NGOをテーマに中国の経済発展の影に隠れた課題に注目して都市をみてみる。

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