2010年2月5日金曜日

『ボランティアと修学旅行の視点』

※1995年執筆
一.ボランティアを取り巻く現状

 ボランティア活動の原則は『①自立性、自発性、主体性②無償性、非営利性③公共性④先駆性、という理念に集約される』という。『ボランティアは「自由意思」の意味のラテン語のボランタスを語源として、志願者、義勇兵などの意味で、通常は「自らの意思で見返りを期待しない社会的貢献」をいう』(『imdas1996』集英社より) 1995年1月に起きたわが国最悪の都市型大震災「阪神淡路大震災」は神戸を中心に地域に多大な被害をもたらした。その災害援助の過程では、ふがない自治体や政府の対応とは逆に注目を浴びたのが「防災ボランティア」の皆さんのテキパキとした行動であった。「防災ボランティアとは災害による拡大を防止するため、自発的に援助活動を行う個人または団体をいう」とある(『imidas』集英社1996年)。「スイスの救助犬より来るのが遅い日本の首相」という非難のある中で、この度の大地震において目覚ましい活躍したボランティアに対していま関心が集まっている。  総務庁の「94年度版青少年白書」によれば、阪神大震災前の調査で、ボランティアに現在参加している人の率は5.3%、まったくしていないは66.9であった。しかし今後ボランティア活動への参加の意志については、80.6%と回答しており、その数値の信憑性は阪神大震災におけるボランティア参加状況が示しているいえよう。 しかし、ボランティア活動が脚光を浴びるなか1995年法政大学で実施した学生の学内意識調査では、「見返りの収入があれば参加したい」としたのが全体の四割になった。今の学生のドライな面がでていると指摘しているが、ボランティアの無償性は崩壊しつつあるのも否定できない。 この意味では日本においては純粋なボランティアより、NPO(非営利組織)と呼ばれる組織による活動運営の方が合っているのかもしれない。NPO(非営利組織)とは、活動による収益は個人的な利益としないという法人組織のことをいう。NPOでは基本財産の保全管理ができスタッフの雇用も安定している。また免税措置が講じられれば寄付も募集しやすく、スタッフにおいても組織としての自覚がでてくるという。日本でもこのNPO(非営利組織)制度を導入しようとする市民団体の法人化を目指す動きがある。政府の動きをみてみると、1992年の生涯学習審議会の答申で、ボランティア活動の支援・推進を掲げている。1994年の青少年問題審議会では、青少年のボランティア活動の促進を意見具申している。

教育現場におけるボランティア活動

 教育の場においても、ボランティア活動が取り上げられている。平成元年の文部省の『新学習指導要領』では特別活動の中で次のように新しく記載されている。勤労生産・奉仕的行事…「勤労の尊さや意義を理解し、働くことや創造することの喜びを体得し、社会奉仕の精神を養うとともに、職業観の形成や進路の選択決定などに資する体験が得られるような活動を行うこと」最近は学校においてもボランティアが着目され、ボランティア経験を高校受験の際の内申書の評価に記載するなどの措置のために、逆に「にわかボランティア生徒」が増えたのは皮肉な結果でもある。

二.「ボランティア活動案」

ボランティア活動は自発性、無償性、非営利性、公共性を特徴とするため、学校活動の中で、半ば強制的に行動させるというのは基本理念に反する。そのためは自主的に生徒がボランティアに参加しようという基礎的な参加土壌を作るのが先決か?中学校のように内申書を気にした「にわかボランティア」は不要、もっと本質的な面で賛同して参加するメンバ-を育てる必要があるだろう。学校におけるボランティアへの取り組みは、きっかけづくりと動機付けにあるのかもしれない。

「修学旅行は神戸地区へ」

神戸へ修学旅行を!地震で被害を受けた神戸地区を修学旅行で是非とも訪れていただきたい。迷惑なことでなんかまったくない。未曾有の大地震から復興しつつある関西の底力やそこに生活する人々を見て何かを感じ取っていただきたい、今何をすべきで、何ができるのかを自分の肌で直に触れていただきたい。神戸の復興への近道は人が交流することにあると考えている。人が集まれば自然と街に活気が出てきて、そこに住む住民もやる気、生気が蘇り生活の張り合いがでるだろう。そこから神戸の復興によりいっそう拍車がかかるだろう。自分の足で神戸の街を歩いて、そこに生活する人の話を是非聞いて、復興に掛ける人々の力を学んでほしい。一回の体験は百回の見聞に勝る。また時間が許すなら、ぜひとも震災ボランティアの方々に協力して手伝ってほしい。地震発生後は一日2万人だったボランティアは、1995年5月の時点で1日1100人にまでに減少した。まだまだ人が不足している現状には変わりはない。地震後の高校生以下のボランティア参加比率は全体の約一割。みなさんの助け合いで一日も早い港町神戸の再現をと提案したい。

「神戸大震災を震災教育の教材に」

 今回の地震被害を決して一部の地域、他人ごととして風化してはならない。歴史の中にはっきりと刻み込まなければならないと思う。かって歴史の中では先の戦争記述など、学校教科書においてはあいまいな記載しかされていない現状もあるが、事実を後世に伝えるためにもっと教材として学校の中で取り上げるというのはいかがだろう。

 事例としては西宮市教育委員会では市内の震災被害を状況をカラ-グラフや地図でまとめた教材を作成したという。理科社会の学習教材として学校に配布して、震災の体験を早い時期に防災教育に活用するというもの。

 このように震災の被害地を見て、それをもとに自分の街の防災教育に役立てるという取り組みを学校教育のなかでも実施提案したい内容である。

「修学旅行でボランティア活動を」

 修学旅行で行えるボランティアを考えてみた。本来ならわざわざよその土地まで出掛けて行ってまでする必要もないという意見の人もいる。身近なところから始めるボランティアが一番役立つことも事実である。

 しかし、地元にいては気付かない視点を別の地域で発見することもある。にわかボランティアが出現する中で、本当にボランティアをやろうとする人々や、まったく無関心だった人々への動機付けやきっかけになればいい。実際のボランティア組織の中には、ボランティアはこうでなければならないと主張する組織もある。純粋に力になりたいと考える初心者を頭から否定したり、ボランティアへの参加意思のある人々のやる気を失墜させている面も見受けられる。残念なことだ。

・地域の文化伝統芸能の継承

 修学旅行ではぜひとも訪問先に古くから伝わる地域の文化伝統芸能に触れていただきたい。できれば自分自身で体験してみるのがいいだろう。全国的にもこの文化伝統芸能を将来的に継承する人が年々減少しているのは、共通の課題のようである。直接これがボランティアとして直結するかは不明だが、長い目でみて後継者になりうる人材がでるかもしれない。

・ 昔話を地元の方から聞く。

・ 地元の祭りに参加する。

・ 町おこしのイベントに参加する。

・ 伝統文化の体験…太鼓、民謡、唄

・環境、自然保護活動

 環境学習とも関連しているが、日本には自然環境を保全したり、希少動植物を保護するために地域で活動している団体がある。彼らの活動を通して自分の住んでいる町との比較してみるものいいだろう。残された自然や生き物を守るため、私たちができることから始めてみることが大切なのです。

 ・観光地のクリ-ンアップ大作戦

・植林活動

・農山漁村での作業の手伝い

「ボランティア活動体験学習」への参加

 ボランティアに関心を持っている人たちに施設や活動の現場を実際に見て、体験してもらおうとする体験学習プログラムがある。夏休みなどの機関を利用して活動内容は高齢者、障害者、環境保護、医療、国際協力などの多岐にわたる。キャンプのように宿泊をともなうものから一日だけの体験メニュ-、学校単位で参加できるものもある。

「ボランティア講演会」

 月並みだがまずボランティアの素晴らしさを気付かせ、これから参加したくなるように仕向けることが必要。ボランティア活動の第一線で活躍するレ-ダ-を招いて、ボランティア参加へ至ったきっかけから現在日本のボランティアの課題を語っていだく。啓蒙的にきっかけを学校として設定することで一人でも多くの参加者への動機付けを行う。

「ボランティアクラブ」の設立

 まず学校の仲間や先生を中心としてスタ-トしよう。決して強制ではないが、中学高校の学生のボランティア組織の場合、核となって活動できる人間が必要だろう。学校の先生がボランティア経験者であれば指導もしやすいのだが…

 また、学校の先生に最初にボランティア経験を積んでもらうというのも検討の余地がある。学習指導要領でも特別の活動の指導の柱となっているのだから。そしてこのボランティアクラブの輪を学校間で地域間で広げていけば一人一人の力は小さくても大きな活動へつながるのではないかと思う。夏休みや春休み、連休を利用した単発でもいいから継続した活動になるよう配慮が必要

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