2013年1月13日日曜日

『今回は違う』

『今回は違う』

この言葉で、株式の相場で、思い込み、勝手に心理、自分都合で、どれだけの人が損をしたか?
でも、ゼロサム社会です。設けた人=損した人の金額は同じです。
以下は2011年のコメントです。

国会では、財政危機をめぐる論議が本格化してきた。与野党ともに現在の政府債務が維持可能ではないというコンセンサスはあるようだが、世の中には「長期金利は低いので大丈夫」といった楽観論が絶えない。本書は過去800年の金融危機と財政危機を網羅した大規模なデータベースによって、この種の楽観論を打ち砕く。

金融危機も財政危機もありふれた現象で、多くのケースに驚くほど共通点がある。それは「かつての危機は**だったが、今回は違う」とか「中南米ではデフォルトが起こったが、わが国は違う」といった理由で、過大な債務が積み上がることだ。過去のデータを分析すると、こういう話には根拠がない。財政危機は先進国でも途上国でも起こり、対外債務でも国内債務でも同じだ。

「財政破綻が起こったのは外債だけだ」という話は間違いで、過去の財政危機の多くは国内債務の破綻で起こった。対外債務が目立つのは、それが世界の投資家の関心を引くからにすぎない。「債権者の95%は日本人だから大丈夫」などというのも根拠がなく、国債が暴落しても邦銀が永久に国債を保有し続けると信じる根拠はどこにもない。

過剰債務は、ゲーム理論でいう複数均衡をもたらす。つまり過剰債務が維持されている状態も破綻する状態もナッシュ均衡で、どれが実現するかは先験的にはわからない。通常のマクロ経済理論は、均衡が唯一(パレート効率的な定常状態)だと仮定しているが、バブルや財政破綻も人々の予想が一致すれば均衡となり、一定の限界を超えるとバブルは一挙に崩壊する。

本書も指摘するように「何かが起こると予想されているときは、必ず起こる」。問題はそれがいつ起こるかだが、財政破綻は複数均衡の一つから別の均衡に移行する非線形の現象なので、予想できない。本書は日本についても多くのページをさいているが、いえるのは財政状態がきわめて危機的であり、いずれ破綻するということだけである。

では政府は何をすべきか。「経済成長によって債務を完済できる」という上げ潮派などの主張については、過去にそういう事例はないと本書は指摘している。日本は金融危機に対して大規模な財政支出で対応したが、これは財政危機をもたらしただけだ。多くの場合、政府はインフレによって財政危機を「解決」する誘惑にかられるが、こういうとき起こるのはコントロールのきかない大インフレで、これは経済を破綻させることが多い。

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